はじめに
こんにちは、みの丸です。
妊娠中は、みなさん多かれ少なかれ食べ物に気を使うものですが、特にビタミンAには要注意とご存知でしたか?
ビタミンAは過剰摂取すると胎児に奇形が出る可能性が高くなるため、摂りすぎには要注意な栄養素なんです。
また、摂りすぎると、胎児に限らず母体にも健康障害をもたらします。
しかし、ビタミンAを摂らなすぎて不足するのも体に悪影響を及ぼします。
どないせいっちゅーねんという感じですが、何事もやりすぎは良くないということです。
この記事では、ビタミンAの過不足が与える影響や、ビタミンAを多く含む食材などについて、書いていきたいと思います。
ビタミンAについて
ビタミンAとは
ビタミンAは、油に溶けやすい脂溶性ビタミンの1つです。食事で摂取されたビタミンAは、脂肪とともに小腸から吸収されます。ほとんど肝臓に貯蔵され、他は血液によって各組織に運ばれ、たんぱく質と結合し、組織を健全に維持する働きをしています。
ビタミンAとは、ビタミンAの作用を示す物質を総称した名前で、その主な物質に、レチノールがあります。
レチノールは、レバーやうなぎなどの動物性食品に多く含まれています。
その他、植物性食品に多く含まれるβ(ベータ)カロテンは、摂取すると小腸から吸収されビタミンAに変換されます。プロビタミンA(ビタミンAの前駆体)と呼ばれ、これもビタミンAに分類されます。
プロビタミンAとは
プロビタミンAとは、赤や黄色の色素であるカロテノイドに属しており、主なものに先ほど述べたβカロテンと、α(アルファ)カロテン、βクリプトキサンチンがあります。
その中でも、βカロテンは他のカロテノイドの2倍の効率でビタミンAに変換されます。
さらにβカロテンは、体内でビタミンAが不足している時に、必要な量だけビタミンAに変換されるようになっています。
そのため、βカロテンによるビタミンAの過剰摂取は知られておらず、過剰摂取とは主に、ビタミンAを多く含む動物性食品やサプリなどの大量摂取によって起こると考えられています。
ビタミンAの単位
ビタミンAの表し方
ビタミンAを表すには、レチノールと、βカロテンなどのカロテノイドをレチノール相当量に換算したものを合計したレチノール活性当量(RAE)を用います。
小難しいですが、ざっくり言うとレチノールの量と、ビタミンAに変換されたβカロテンなどのカロテノイドの量を合計したもの、ということです。
もっとざっくり言うと、RAEという単位が出てきたら、「レチノールとβカロテンが合計されてるんだな」と思っていただければ大体OKです。
一応以下に詳しく書いておきますが、別に読まなくても全然問題ありませんので、お急ぎの方は次の章にいっちゃって下さい。
レチノール活性当量(RAE)とは
レチノールとβカロテンは、同じような機能を持つ成分ですが、それぞれの効力が異なります。
そのため、βカロテンとその他の成分をレチノール相当量に換算し、それをレチノールと合算したものをレチノール活性当量(RAE)としています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2015年版」では、食品由来のβカロテンのビタミンAとしての生体利用率は、レチノールの1/12とされています。
したがって、βカロテン12μgがレチノールの1μgに相当する量(レチノール活性当量:RAE)であると換算されます。
同様なプロビタミンAのαカロテンと、βクリプトキサンチンは、βカロテンの1/2の転換率とされているので、それぞれ24μgがレチノールの1μgに相当します。
これらを以下の式にすると、全ての食品中のビタミンA含量を、レチノール活性当量として求められます。
レチノール活性当量(μgRAE) =レチノール(μg)+βカロテン(μg)×1/12 +αカロテン(μg)×1/24 +βクリプトキサンチン(μg)×1/24 +その他のプロビタミンAカロテノイド(μg)×1/24
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ビタミンA不足の症状と1日の推奨量
ビタミンAの役割
ビタミンAは、視覚、聴覚、生殖等の機能維持、成長促進、皮膚や粘膜などの上皮組織の正常保持、たんぱく質合成など重要な役割に関与します。
ビタミンAが不足すると?
ビタミンAが不足すると、初期段階として、暗いところで目が見えにくくなる夜盲症が起こり、その後失明する場合もあります。その他、感染症に対する免疫力も低下します。
特に妊婦さんは、免疫力が低下しやすいので、更にビタミンAが不足してしまうと、病気にかかりやすくなってしまいます。
また、ビタミンA不足により、お腹の赤ちゃんの発育不全を招くため、妊婦さんはしっかりとビタミンAを摂らなければなりません。
ビタミンAの1日あたり推奨量
現代では、通常の食事でビタミンA不足になることはほぼありません。妊婦さんには、妊娠後期から通常の推奨量に付加量が加算されますが、食事からでも十分摂取できる量です。サプリなどに頼るのではなく、過剰摂取の心配のない野菜からビタミンAを摂るよう心がけましょう。
厚生労働省によるビタミンAの推奨量は下記の通りです。
ビタミンAの推奨量 ・18歳~29歳の女性 650μgRAE/日 ・30歳~49歳の女性 700μgRAE/日 ・妊婦付加量(妊娠後期) +80μgRAE/日 ・授乳婦付加量 +450μgRAE/日 ※耐用上限量 2700μgRAE/日(βカロテンを含まない) 耐用上限量=過剰摂取による健康障害を起こすことのない最大限の量
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それぞれの年齢の推奨量に、妊娠後期であれば1日80μgRAE、授乳中であれば1日450μgRAEを加算して摂取しましょう、という意味です。
ちなみに、推奨量にはβカロテンによるビタミンAの摂取が含まれていますが、耐用上限量の算出には含まれていません。そのことからも、野菜からのビタミンAの摂取が安全であることがわかります。
ビタミンAの過剰摂取による症状
なぜ摂りすぎるといけない?
そもそもなぜ摂りすぎるといけないのかというと、ビタミンAは脂溶性であるため、葉酸などの水溶性のビタミンと違い水に溶けないからです。
水溶性であれば、摂りすぎても体内の過剰分は尿で排泄されますが、脂溶性のビタミンAは排泄されずに肝臓や脂肪組織に蓄積されてしまいます。そのため、過剰症を起こしてしまうのです。
ビタミンA過剰摂取による症状
ビタミンAの過剰摂取による症状には、急性のものと慢性のものがあります。
急性では、頭痛、腹痛、悪心、嘔吐、めまいなどの後、全身の皮膚が剥がれ落ちる症状がみられます。
一方、慢性では全身の関節や骨の痛み、皮膚乾燥、脱毛、食欲不振、頭痛などを示します。連日7500μgRAEを摂取すると慢性症状が出現すると言われています。
その他、催奇形性(胎児に奇形が発生する危険性のこと)、骨密度の減少、骨粗しょう症といった症状が知られています。
妊婦のビタミンA過剰摂取のリスク
先ほど述べた通り、一般的にビタミンAの過剰摂取は危険な症状が出ますが、特に妊婦さんに注意が促されるのは催奇形性があるためです。
妊娠3か月までにビタミンAを過剰摂取すると、胎児に奇形が出る可能性が高くなります。
また、特に産前産後は骨密度が減少してしまう時期なので、骨粗しょう症のリスクも上がります。
といっても、普通の食生活を送っていればほぼ過剰摂取になることはないので、そこまで神経質になる必要はありません。
ただ、ビタミンAをかなり多く含む動物性の食材もあるので、そういったものを毎日食べる生活を続けると、胎児の奇形のリスクが上がってしまいますので極端な偏食には注意です。
加えて、ビタミンAサプリの使用も過剰摂取になりやすいので、注意が必要です。
ただ、βカロテン由来のサプリもあるので、使用したいという方は病院や薬局で相談の上で飲まれるといいと思います。
ビタミンAが多く含まれる食材
動物性食材
それでは、ビタミンAが多く含まれる食材について、まずは動物性の食材からみていきましょう。
「日本食品標準成分表2015版 (七訂)」より引用し、数値の高い食材や、身近な食材をピックアップしました。
食品名 | レチノール(μg/100g) |
豚(スモークレバー) | 17,000 |
鶏レバー(生) | 14,000 |
豚レバー(生) | 13,000 |
牛レバー(生) | 1,100 |
あんこう(きも、生) | 8,300 |
やつめうなぎ(生) | 8,200 |
うなぎ(きも、生) | 4,400 |
ほたるいか(ゆで) | 1,900 |
ぎんだら(水煮) | 1,800 |
うなぎ(かば焼き) | 1,500 |
あなご(蒸し) | 890 |
食塩不使用バター | 780 |
有塩バター | 500 |
鶏卵(卵黄、生) | 470 |
鶏卵(卵黄、ゆで) | 440 |
ご覧の通り、鶏レバーと豚レバーのビタミンA含有量が圧倒的です。普段食べる機会のない食材も多いですが、うなぎは比較的馴染みがありますね。
含有量上位のものはあっという間に上限量を越えてしまいますので、毎日のように食べるのは危険です。ただ、月に1度少量だけ、など時々楽しむ分には問題ありません。
植物性食材
次に、βカロテンの豊富な植物性の食材をみてみましょう。
食材名 | βカロテン(μg/100g) |
味付きのり | 29,000 |
パセリ(乾燥) | 28,000 |
にんじん (根、冷凍、油いため) | 11,000 |
にんじん (根、皮むき、油いため) | 9,900 |
にんじん (根、皮むき、ゆで) | 7,200 |
モロヘイヤ(茎葉、ゆで) | 6,600 |
バジル(葉、生) | 6,300 |
西洋かぼちゃ(焼き) | 5,400 |
ほうれん草(葉、ゆで) | 5,400 |
しゅんぎく(葉、ゆで) | 5,300 |
味付きのりは、かなりβカロテンが豊富に含まれていますね。おやつがわりにつまむこともできる便利な食材です。1gあたりでも290μgになるので、効率よくβカロテンが摂れそうです。
また、味付きのりには胎児の成長に必須の葉酸も豊富に含まれているので、妊婦さんの味方とも言える食材です。
葉酸については、こちらの記事で詳しく書いていますので、参考にどうぞ!
野菜ではにんじんが圧倒的です。野菜は、生のままよりも冷凍保存した方が栄養価が高くなることがありますが、にんじんもその1つです。
そして、ビタミンAは脂溶性なので、少量の油で炒めると吸収率が高くなります。
このように、同じにんじんでも保存法や調理法でβカロテンの数値が変わります。冷凍保存したにんじんを油で炒めるとβカロテンが一番高くなるようです。
まとめ
以上、ビタミンAについてのお話でした。
老若男女問わず大切な栄養ですが、特に妊婦さんは過不足なく摂取したい栄養です。
ただ、神経質になる必要はなく、ポイントを押さえておけば過剰な心配はいりません。
・内臓系とうなぎを爆食いしたらヤバイ
・サプリではなく主に野菜から摂る
この2つを心に留めておけば、健康障害を起こすような過不足にはなりません。
良くないのは、リスクを気にして特定の食材を全く食べなかったり、逆にリスクが減るからと大量摂取したりと、偏った食生活を送ることです。
これを食べたから即異常が出る、または出なくなる、ということはありません。あくまで極端な食べ過ぎや食べなさすぎが悪影響を及ぼします。
たまには贅沢してうな重食べても、全く問題ありません。レバニラ炒めでご飯ガツガツいっちゃって下さい。毎日じゃなければ!
日々色々な食材をバランスよく食べ、食事を楽しむことがお母さんとお腹の赤ちゃんの健康に一番です!
この記事が、妊娠中の食事が気になる方に、少しでも参考になれたら幸いです。
参考
・食品安全委員会 「ビタミンAの過剰摂取による影響 」
www.fsc.go.jp/sonota/factsheet-vitamin-a.pdf
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版) ビタミン(脂溶性ビタミン)」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042635.pdf
・文部科学省「食品成分データベース」
https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
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